カワセミだより

1999年4月17日発行
第5号
「奈良川源流域を守る会」


よみがえれ! ゼニタナゴ

「ゼニタナゴの生息地を復元し、奈良川源流域を保全する活動」
 世界最大の自然保護団体WWFの支援により活動開始!

ゼニタナゴとその生息環境の
復元を目指して

会長 野川喜一

   皆さんはゼニタナゴという魚を知っていますか。背びれにゴマを振りかけたように黒い点々がある、体長九センチほどのきれいなタナゴです。

   かつて、奈良川の水源の一つである本山池は澄み渡り、そこには泳ぐとぶつかるほどのゼニタナゴが生息していました。冬場をのりきるエサとして、カワセミ、サギ、カイツブリ、イタチなどに狙われ、全滅かと思うほど食べ尽くされても、また春には湧くように生まれたものです。池に集まる豊かな生物をゼニタナゴが支えていました。毎年池には「イタチとり」がやってきてたくさんのイタチを捕獲していきました。五月ともなると浮上した稚魚が真っ黒く群をなし、ゼニタナゴが卵を産み付けるカラス貝も爪の大きさくらいの稚貝をザクザク産みました。子供の頃、水浴びやタナゴ釣りに疲れると、大きなカラス貝を採ってきて炭火であぶってはしょうゆをさして食べました。なかなかの美味でした。こうして本山池で遊んだ楽しさは忘れることができません。

   今では、悲しいことに、水質の悪化などから、ゼニタナゴどころかその貝さえも激減してしまいました。

   本山池での絶滅が心配で、私はゼニタナゴと貝を救い出し、しょいこで何杯も自分の池に運び入れ、以来二十年、これを保護してきました。五年前からは県の試験場と協力して復元に心を砕いています。

   一度失った自然の生態系を取り戻すことは途方もなく難しいことです。ゼニタナゴに限らず、ヤリタナゴ、ゲンジボタル、ホトケドジョウ、メダカなど、谷戸がつぶされ生活の場を失っていく生き物を思うと残念でなりません。

   幸いWWFにも会の活動が認められ、ご支援いただきました。試験場との協力態勢のもと、会員の皆さんとゼニタナゴの復元を目指して力を尽くしていきたいと思っています。


写真1. ゼニタナゴの成魚

救おう! ゼニタナゴ

   ゼニタナゴは一昔前まで奈良川の水源の一つである本山池にたくさん生息していましたが、今では国が絶滅危惧種に指定して保護に乗り出すほどの、幻の魚です。長年会長が守ってきたこの魚の現地での復元に会としても息長く取り組んでいきたいと思います。

   ゼニタナゴが生息するには、清らかな水、卵を産み付けるカラス貝やドブ貝、その貝が寄生するヨシノボリという魚が必要です。それには奈良川源流域の生態系全体を取り戻さなければなりません。

WWFの助成を受ける

   奈良川源流域を守る会の「ゼニタナゴの生息地を復元し、奈良川源流域を保全する活動」がWWF Japanの「一九九八年度助成事業」に選ばれ、その会報六月号と十月号に紹介されました。

写真2. 卵
写真3. 幼生
写真4. 稚魚

   WWFは一九六一年に設立された世界最大の自然保護団体です。WWFインターナショナルを中心に、各国委員会とその提携団体があります。その日本委員会(WWF Japan)は、パンダやトラなどの野生生物や自然を守るとともに、日本各地の自然保護活動を支援しています。

ゼニタナゴの不思議な生態

   ゼニタナゴはコイ科の魚で、平野部のため池、小川に生息します。成魚は体長九センチ程度です(写真1)。秋にカラス貝、ドブ貝などの二枚貝に、一個あたり最大百個の卵(写真2)を産卵。四、五日で孵化した幼生(写真3)は貝の中で越冬、翌年五月頃に稚魚(写真4)となり貝から浮上します。寿命は約二年です。

   ゼニタナゴが他のタナゴと違うところは、貝に産み付けられた卵が貝の中で孵化し越冬することです。稚魚となって貝から浮上するまで約半年もかかります。ミヤコタナゴの十倍です。こんなタナゴは他にありません。貝が冬、持ちこたえられず飼育は大変難しいのです。そのため、ゼニタナゴ復元の成否は貝の飼育の成否にかかっています。しかし、貝自体も激減し、飼育方法も確立していません。

   貝は四月、お腹に貝の幼生をはらみ、それをヨシノボリ(ハゼ科の淡水魚)に吹きかけます。貝の幼生はヨシノボリのエラや体に吸盤でとりつき、体液を吸って三週間育つと吸盤が殻に変化し、ポトリと落ちて稚貝となります。従って、ゼニタナゴを育てるには、貝とヨシノボリを育てなければならないのです。

ゼニタナゴの写真は水産総合研究所の勝呂さんによるものを、許可を得て掲載しています。

ゼニタナゴとその生息環境の
復元へ向けて

国もゼニタナゴ保全へ

 水産庁がゼニタナゴ保全へ

 環境庁が絶滅危惧種に指定

   水産庁は絶滅寸前の稀少水生生物のデータブックを一月三十日にまとめ、特に生息状況が深刻な淡水魚類十三種を指定し、自治体と協力して保全に取り組むことにしました。神奈川県産ゼニタナゴがこのうちの一つに選ばれています。県産ゼニタナゴは遺伝子的に非常に貴重な系統群なので、国も危機感を持って保全に乗り出しました。また、環境庁も新しいレッドデータブック(絶滅の危機にある生物の情報集)で、ゼニタナゴの分類を「希少種」から「絶滅危惧種」に変更しています。

神奈川県水産総合研究所の取り組み

   平成五年、絶滅したと思われていた神奈川県産のゼニタナゴが当地で生息していることがわかり、新聞に取り上げられ大きな反響を呼びました。

   県の水産総合研究所が、野川喜一会長の協力のもと、その保護に乗り出し、以来何年も増殖実験を試みています。

   現在、当地から持っていった魚の子孫、約百匹が研究所の水槽で生きています。この百匹という数字は、種の保存のためには大変危険なレベルです。ゼニタナゴの寿命は約二年なので、一年、繁殖に失敗すれば、絶滅につながる恐れがあるのです。

研究所と協力し復元に挑戦

   県の研究所の最終目標は現地での復元です。そこで当会ではWWFの支援の下に、研究所と協力して当地でのゼニタナゴ復元に挑戦することにしました。

   会では美しいゼニタナゴが川や池一面に泳ぎ回る姿を夢見て、活動を開始しました。

一九九八年度の活動
池づくりと貝の飼育

   まず、ゼニタナゴを育てるための池を作りました。横約二メートル、縦約四メートル、深さ約五十センチの池です。浅いところと深いところを作り、貝のため斜面にして泥を入れました。また、魚の隠れ家として、栗の古木一本を入れました。マスを通し湧き水をひき、まず五十個のドブ貝の飼育から始めていますが、現在、一匹も死なず順調に育っています。また、池の水の溶存酸素とpHを定期的に計測し記録しています。

一九九九年度の活動予定
貝とゼニタナゴの飼育・本山池から流れる水の浄化

   この春から、作った池にヨシノボリを入れ貝を育てて稚貝を誕生させ、初夏からいよいよこの池でゼニタナゴを飼育する予定です。

   最終的な目標は、奈良川源流域の生態系を取り戻し、奈良川や本山池でゼニタナゴを復元することです。奈良川の小川アメニティを多自然型にすることはもちろんですが、本山池の水の浄化が先決問題です。まず、池の水が入っている自然の手掘りの池で、近年注目されている竹の炭(近々ドラム缶を使った会長独自の製法で炭焼きを行います)を使っての水の浄化と、細かい泡に汚れを付着させるマイクロ・バブルによる浄化を試み、そこで貝の飼育実験を始めます。

   一方、元来の生息地である本山池の生態系復元ついては、玉川大学、県と当会の協力体制が出来始めました。

   私たちのふるさと・奈良の魚、ゼニタナゴが泳ぐ日が一日も早く来るように、力をあわせていきたいと思います。なお、会のゼニタナゴ・チームの活動は土、日の午後二時からです。参加なさりたい方はご連絡ください。


谷戸田の米作り

六月六日(土)

田植え

長谷川恵美

   六月六日梅雨期の小雨も折良く上がり、先日掘り起こした田は、会長ならびにご家族のご尽力により良く耕され、水面を餌を求めて燕がかすめ飛んでいました。源流の湧き水の田は、(元)早乙女達の足に優しく、泥パックなどと言いながら一列に並び、田植えが始まる。数十日後の青田の稲の波、渡る爽やかな風、舞う螢、収穫の秋、月明かりに頭を垂れる稲穂の影、数日前九十一歳で逝った田舎の母への鎮魂(健康だった母は、八十歳の半ばまで、折れた腰で田に入り米作りを続けていました)等々、一株一株思いを込めて終了。食料を輸入に頼っている昨今、無農薬米作りという貴重な体験をさせていただき、感謝しています。八十八回手がかかるということですが、田植え後のケアを会長にすべてお任せしている事に心苦しさを感じています。子供たちが大地の恵みの有り難さ、良い環境の貴重さを、こんなに身近に触れることのできる、この源流域を守っていかなければと、改めて思いました。

七月四日(土)

草取り

本間ふみ子

「驚き桃の木田圃の草取り」

   草なんて見あたらないきれいな稲田、草取りではなく稲の根を掻き混ぜて発育を促すのが目的という会長さんの説明に納得。それではと田の中に足を……エー何処までもぐるの!

   やっと立ったのはいいけれど、歩幅を広くとりすぎて足がぬけない。どうしよう、尻餅をついたら稲をつぶしてしまうと必死。何もしないうちから汗びっしょり。三列を受け持って進行していくのに足の抜き差しに一杯でいつの間にか右となりの列に曲がって、「そこ済んでまーす!」「これは失礼。」脳細胞のどこかが詰まって素直に行けないのかななんて思いが頭の隅を横切る。「はーい終わりました!」「エーまだ四株か五株位しか進んでいないのになんでぇ!」反対側からベテランの鮮やかな手さばきが迫る。こちらはもぐった足が大地に届けば安定して立てると、やっと実感できたところ。あっという間の田の草取りは驚きの連続でしたが、どろーっとした土の感触と稲の根の筋張った力強さが忘れられません。すべてがはじめての体験で、オジャマムシのお手伝いでしたが、ああ、楽しかった。

九月二十六日(土)

稲刈り

小川桜子

   ごく軽いのりで、私は利鎌と長靴持参でいそいそと稲刈りに出かけました。ところが長靴は役に立たないとのこと。ならばとズボンをたくし上げ裸足で稲田に降りるや否や、ズブズブと膝まで沈む。谷戸田は昔、底無し沼だったとか。稲を刈る人、束ねる人、写真を撮る人、皆楽しくてどんどん進みました。「!!!」何と私の横で大きな落とし物をしている妙齢のご婦人がいる!? でも、疑いはすぐに晴れました。ぬかるみに脚を下ろすとき、引き抜くときの、まあそっくりな大音響なのでした。

   稲をばらけないように束ねて閉じるのも、女性にはなかなかの力仕事でした。稲かけは会長さんとベテランの会員の方。風に吹かれても飛ばされないコツがあるとか。予報通り、稲かけが終わった正午、雨がぱらついてきました。差し入れの茶菓のその美味しかったこと。

谷戸守る漢(おとこ)の稲田わつと人
   ※漢(おとこ)……好漢の意

稲を刈る鼻先虫の逃げ惑ふ   桜子

十一月二十二日(日)

今年もお米が穫れたぞ

収穫祭

青空たんぼ

   十一月二十二日(日)、昨年に続く二度目の収穫祭が開催された。

魅力のメニュー

その1/守る会総力上げて皆様にお届けする「薪のお釜で炊いた、無農薬手作り米の手作りおむすび」・・・田植えから稲刈りまで、昔ながらの農法で育て上げた守る会の手作り米を、薪と鉄のお釜で、はじめちょろちょろなかぱっぱの鉄人技により炊きあげてしまうという付加価値おむすび。

その2/秋の空には欠かせない「あつあつ豚汁」・・・キングオブ豚汁の名にふさわしいベテラン主婦達による黄金の豚汁。美しい紅葉と澄み渡った空に、なぜか豚汁はよく似合う。

その3/お父さんガンバル、子どもヨロコブ「フランクフルト」・・・フランクフルト鑑定団のシビアな目に耐え抜いた、正しく立派なフランクフルトを心を込めて焼きあげる。

その4/焚き火で焼くのが新鮮「竹筒パン」・・・パン道を極めた会員の手による生地を、竹の棒にひとつひとつ巻き付け、焚き火で焼いてしまうというのが何とも豪快で素朴。竹の棒はもちろん会長さん手作り。

その5/赤味噌がみそ「田楽」・・・香ばしい味噌と相性バツグンの自然食品コンニャク。体重を気にせず食べられるのがうれしい。

その6/街じゃ買えない「お米販売」・・・守る会の手作り米と徳島のアイガモ米。共に無農薬有機米を破格値で。

その7/各種飲み物(アルコール含む)

以上すべてのメニューが、予定終了時間の午後二時前には完売御礼となり、1998年の収穫祭も大成功のうちに終了したのだった。春がきて、夏が過ぎ、秋になる・・そんなごくごくシンプルなことが、とても貴重に思えビールが旨い収穫祭を、是非来年もと願う青空であった。


谷戸の自然を肌で感じて

  奈良川源流域での観察会の記録

四月五日(日)

植物観察とお花見の会

遠山恵子

   暑さ寒さも彼岸までと言いますが、お彼岸を過ぎると桜前線が南より北上してきます。桜の開花で風景はあっという間に春。人々の心を魅了します。今年の桜は咲きはじめに冷え込みがあり、お花見がいつもより長く楽しめたようです。

   お花見の会の前に玉川大学の先生をお招きして、桜の講義を受けました。桜には、おおしまざくら、そめいよしの、ひがんざくら、やえざくら、やまざくら等々、その外たくさんの種類があること、昔は「桜切るばか、梅切らぬばか」と言われましたが、今は切って育てることも聞きました。その後、玉川学園の中を散策、満開の桜の中を見学。野川喜一会長宅の見事な大島桜の下でお花見の宴。尾根から見る周りの風景は、柔らかな日本画の世界でした。今までと違ってしみじみと桜を観察、美しさを愛で、年を重ねたためか、それとも日本人の心か、桜に魅せられた楽しい素晴らしい一日でした。

四月二十九日(祝)

奈良川源流域

春の鳥

加 藤 王攵 男

   みどりの日、ツピーツピーと鳴くシジュウカラ、頬が白く活発な小さな鳥、甲高く明るい声で耳に心地好い。昆虫が主で木の実も食べると言われる。指導の先生は、日本野鳥の会常務理事の市田孝則氏、語り口は相手を飽きさせない話し上手である。ホオジロは自分のテリトリーを守るため盛んにさえずるとか、一筆啓上仕候、源平つつじ白つつじとかチチとかいう小さな声を出す。先生が口に手をあて「シー」。参加者のざわめきが一瞬消える。三脚に望遠鏡を取り付けホオジロに焦点をあわせる。手慣れたものである。ファインダーを覗かせていただくと嘴を斜め上方に向けてさえずっている。凛々しい姿である。昔縁日でオミクジを銜えた鳥はヤマガラであったろうか。ヒヨドリはピーヨピーヨと喧しい。最近は雲雀の声が聞かれないのは寂しい。コチドリは歩きかたに特徴があり可愛らしい。短時間であったが日頃のストレスの解消には役立った。

中村啓子

   四月二十九日は朝からお天気もよく汗ばむくらいの気温でした。おなじみの市田さんをお迎えしての観察会なので前日に新宿区の住まいから奈良町へ行きました。はじめに会長さんのお話では、今年は鳥が落ち着いていないそうです。環境の変化が原因ではないかと思いました。珍しいツミが会長さん宅へ来たそうで、写真を見せていただきました。市田さんは沖縄まで見にいったとのことでした。

   田にはカルガモ、セキレイがいました。我が家ではカルガモは神田川にいるものと思っています。自然の中で見るほうが趣があります。その外ホホジロ、コチドリ、シジュウカラ等、最後にいつものように元気に飛んでいるチョウゲンボウに会いました。また、朴の木の甘い香りのたいぎな白い花をはじめて見ました。朴葉みその葉でした。

   生物は環境によって左右されます。都市周辺にも皆が共に生きていけるような、よりよい自然を残すことも大切だと感じました。

七月十九日(日)

ホタルの夕べ

酒屋登志子

美しい里山と蛍が大好きおばあちゃん

   七月十九日(日)の夜七時半から八時半まで、「奈良川源流域を守る会」の企画で「ホタルの夕べ」がございました。奈良町の川沿いの土と風の匂いがする田んぼのほとり、カエルの合唱が聞こえて、蛍が緑ブルーの光を放って、田んぼの稲の上を飛び交っていました。十年振りで見る蛍なのでうれしくなってしまいました。私が子供のころは、夏になると小さな流れのあるところにはどこにも蛍が飛んでいたものです。近ごろの子供さんたちは、それを見ることすらなくなってしまいました。「こんなに小さくて可愛い虫が今も居るのよ」って教えてあげたいです。その日には、横浜ほたるの会の丸茂先生、奈良小学校の校長先生もおいでくださり、お話しを聞かせてくださいました。

   大勢の小学校の子供さんたち、お父様お母様も参加してくださって、にぎやかで楽しい自然観察会でした。こんな「可愛い美しい光を出す蛍」を何十年間も農薬を使わず、「生まれも育ちも奈良上の蛍」を育ててくださった野川会長さんのお力に感謝の気持ちで一杯でございます。蛍は夜は九時過ぎると木の枝の間で眠ってしまうのだそうです。なんて可愛らしい虫さんでしょう。

八月九日(日)

昆虫観察会

佐藤貴比呂

   「奈良川源流域を守る会」に今回初めて参加させていただき、いきなり原稿を書くことになり驚いています。

   家から集会所に向かうまでの間は、「源流域を守るため、大人に混じって中学生が一人参加するのだ」とかってな想像をし、緊張していましたが、着いてみると小学生も多く、変な妄想は晴れ、明るい日差しが射し込むような雰囲気でした。

   最初に名簿に名前を書いて、玉川大学の佐々木先生の講演を聴きました。レンゲ、クローバ、リンゴ、みかんなど、蜂蜜にも種類があるとは、初めて知りました。また、蜂の巣がロウソクになる、なんてことは初耳で、しかもそれが煙の出ない高級品だったなんて!それならば、はちみつを売りつつロウソクも造っているというメーカーは存在するのでしょうか。それにしてもすべて無駄なく使えるなんて鯨のようだと思いました。

   外に出ると、専門家用の捕虫網を持っていたせいか、先生にモンシロチョウをとってほしいと言われたので、気合いを入れて採ろうとしたのですが、かなり見苦しい網裁きを発揮してしまいました。先生のあきれた表情と父親(捕虫網の本当の持ち主)の冷ややかな視線を、小さくなって受け止めるしかありませんでした。

   気を取り直し歩き始めました。十mも歩かないうちに何度も止まります。その分、面白さが凝縮されています。始めてみる電気虫と呼ばれる虫や、いろいろなトンボ、なにより切っても切れない葉っぱには驚きました。そして、普通の道端からいろんなものを発見する知識の量にも驚きました。

   サッカー部の練習があるのでなかなか難しいけど、次回からもなるべく参加しようと思います。

十一月十五日(日)

草笛の会

山田美那子

   暖かな秋の日、奈良川源流域の谷戸になつかしい草笛のメロディーが流れていきます。一枚の葉から発したとは思えない、しっかりした音色に、感嘆の声があがりました。吹き手の玉川学園の佐藤邦昭先生は、あちこち引っ張りだこの草笛の名手です。

   まず教えていただいたのはカモジグサを使った草笛です。これが、吹いても吹いてもなかなか音が出ません。ピーっと鳴ったうれしさ。鮮やかなオレンジ色のカラスウリ、ドングリ、篠竹、先生の手にかかると皆、笛になってしまいます。遠くでヤギが草をはみ気持ちよい風が吹いています。

   先生が「中国の雲南省には今でも歌垣があり草笛で呼び合うのです。」とおっしゃいましたが、同じようなロマンチックな風習がこの辺りにもあったとのこと。

   木の葉の草履、松葉の弓矢、水木の葉の糸すだれ、オオバコの相撲、野にはこんなにもたくさんの楽しい遊びがあるのです。

   会館に戻ってシュロの葉で馬を作るのを優しく丁寧に教えてくださいました。帰り道、耳の奥にまだ草笛の音が響いていました。


源流域情報

西谷戸の緑地、住民に使用許可

   小鳥の宝庫であった西谷戸の半分は、福祉施設と都市計画道路ですでにつぶされ、猛禽類の飛び交う源流域の生態系は大きなダメージを受けました。ハヤブサやツミは相変わらず姿を見せるものの、六つがい十二羽も営巣していたチョウゲンボウは、最近は二、三羽しか見られません。西谷戸に残された半分の緑地に対して、当会からはもとより周辺の奈良上自治会、玉川学園台自治会からも緑地保全の要望書が提出されています。そこで、市はここに計画していた住宅地造成を棚上げにして、住民による暫定的使用を認めました。今後も住民の意思を反映させ、残された緑地を保全し、将来に受け継いでいきたいものです。

ハーブ・ガーデン ナチュラパス ブルーベリーの花まつり

   ナチュラパスでは、満開のすももや桜の木の下で、百種を越す水仙の黄色い花が咲き、もうすぐブルーベリーの花まつりもやってきます。

   今年はハーブ苗とともに、イングリッシュガーデンには不可欠の様々な宿根草の苗が用意されているそうです。ナチュラパスで花咲く春のひとときを楽しむというのはいかがでしょうか。

「青葉区で一番好きな道」

   土橋谷戸の田んぼ沿いの道が、区が配布した「わいわいの道マップ」で、「青葉区で一番好きな道」に選ばれました。田を渡る風が吹き、ホタルが見られる道です。またその道沿いには、ヒナゲシ、ヒマワリ、コスモスと季節の花が次々に咲いていきます。土日の午後二時から会員が草刈りや花壇の世話をしています。どうぞご参加ください。


入会案内(入会随時)

▼会費/年間二千円(家族は無料)
▼会員の方には、会報「カワセミだより」をお送りして定例会のお知らせをするほか、随時催し物のご案内をいたします。
▼インターネット上の当会のページでは、会報のバックナンバーがご覧になれます。
http://nara.yato.jp/

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