奈良川源流域では、これまで5年間にわたり、環境省の全国的プロジェクトである「モニタリングサイト1000(詳細はトップページ参照)」の鳥類調査を実施してきました。ここでは、2009年越冬期~2013年繁殖期に実施した全10回分の調査結果を整理し、当調査地における鳥類相の変化をみてみました。
ラインセンサス法によります。これは、一定のルートを決めゆっくり歩きながら、双眼鏡・肉眼等で鳥類の種及び個体数を記録していく調査方法です。記録用紙には種名と個体数のほか、同定ポイント(視認・さえずり・地鳴き)、齢(成鳥・幼鳥)、繁殖行動(餌運び・巣材運び・その他の繁殖行動)等を記録していきます。
マニュアルでは、越冬期は1-2月、繁殖期は5-6月に、各6回の調査を実施することになっています。当調査地では、1日につき2回(1往復)の調査を、2週間の間隔をあけ3日繰り返しました。ただし、初回(2009年越冬期)のみ、3回(1往復半)の調査を2週間の間隔をあけ2日実施しました。
なお、調査範囲はルートの周囲50mですが、この資料では概要把握のため、範囲外及び時間外記録(ただし本調査主催者に報告済みのもののみ)を含めています。 調査期日、天候等詳しくはこちらです。
下記のとおり、尾根道のA~階段上のFまで、ルート周囲の環境によって6種に区分しました。ちょうど調査を開始した2009年ころ、A区間のすぐ南側に老人福祉施設が建設され、樹林が伐採されていました。また、Eの竹林(ササ林)は一部伐採され、当初より面積が狭くなっています。F区間にたくさんあったピラカンサは2010年に強く剪定され、実が少なくなりました。
(PDFはこちら)
全体的には、ヒヨドリ、ムクドリ、シジュウカラ、キジバト、ハシボソガラス、ハシブトガラス等が多く、典型的な里山の鳥類相を示しており、都市型の傾向も見られました。
季節的には、繁殖期よりも越冬期の方が種数が多い傾向がみられました。
猛禽類は、ツミ、ハイタカ、オオタカ、ノスリ、チョウゲンボウの5種が確認されました。チョウゲンボウは調査ルート近くで繁殖が確認されており、本調査でも継続的に複数の個体が確認されています。ツミ、オオタカに関しても近隣地域での繁殖情報があります。
外来種では、ガビチョウ、コジュケイが多く、繁殖期には複数個体が大きな声でさえずっているのが確認されました。
その他特筆すべき事項としては、小鳥類の一時的な減少が挙げられます。2012年越冬期は全国的に小鳥類がとても少なく、当調査地でも同様の傾向がみられましたが、この原因ははっきりわかっていません。ただし、データを見ると、その直前の調査である2011年繁殖期の時点で、既に小鳥類が少なかったことがわかります。しかし、特に少ないのはシジュウカラ、ムクドリといった留鳥で、冬鳥の少ない原因はこれだけでは不明です。2013年越冬期になると回復し、2011年以前とほぼ同様の種数及び個体数となりました。
2013.10