奈良川源流域の鳥類の個体数調査
平成19年〜21年(2007年〜2009年)
源流域を舞うチョウゲンボウ
調査方法
鳥類の生息状況を調べるために、その種類と個体数を継続的に記録する
鳥類センサスという方法があります。奈良川源流域を守る会では、
鳥に詳しい人が会員になったのを契機として、その人に教えてもらいながら、
鳥に興味のある人たちで、この方法による鳥類の生息状況調査を行っています。
具体的には、ラインセンサスという方法で、あるルートを定めて、その
ルートを歩きながら、出会う鳥の種類と数を記録することを継続的に
行うものです。
以下に2007年から2009年の調査結果を掲載します。
2007-2009鳥類ラインセンサス集計結果報告
調査目的
奈良川源流域における鳥類相を明らかにし、鳥類の保護管理計画策定に関する
資料とすることです。
調査位置
センサスルートは、下図の土橋谷戸から玉川学園へ通じる階段の下まで
(C右端からF左端まで)、約600mです。
センサスルートの位置
この調査地域は、谷戸の地形を呈し、水源および水田、その周囲の林分や住宅地を含む典型的な里山です。
調査期間
2007年10月より2009年9月までの2年間です。
調査の具体的方法
毎週土曜日07:00より、双眼鏡を用い、ラインセンサス法により
鳥類の個体数を記録しました。確認距離は特に定めず、全ての確認記録を含め
ました。センサス外(時間や範囲を超えたもの)の記録は含めないものとしました。
調査結果
各月の確認個体数は、下表のとおりです。
なお、各月ごとの傾向を把握するため、確認個体数は各月の調査回数で割り、
小数点以下は切り上げとしました。
まとめ
(1)全体的な傾向
毎月コンスタントに出現し、特に個体数が多いのは、ヒヨドリ、ムクドリ、
キジバト、ハシブトガラス、メジロ(平均個体数の和、上位5種)です。
また、これらにより、調査地域の鳥類相は都市型の傾向があるといえます。
(2)渡りの区分による出現傾向
結果より、調査地域における鳥類の渡り区分は以下の通りです。
夏鳥:ツバメ
冬鳥:ツグミ、アオジ、モズ、シロハラ、カシラダカなど
留鳥:チョウゲンボウ、ヒヨドリ、キジバト、シジュウカラなど
旅鳥:ホトトギス、オオヨシキリなど
夏鳥に比べ留鳥・冬鳥の種数が多いことがわかります。
(3)生息環境の区分による出現傾向
年間を通して、ヒヨドリ、ムクドリ、キジバトなど、都市(住宅地)や
点在する緑地に適応した種が多いです。
上記に加え、シジュウカラ、ウグイス、アオゲラ、ツグミなど、樹林・林縁、
を好む種の個体数が多いことから、それらの種の生息に適した環境を備えている
と考えられます。
なお、調査地域には水路、水田、本山池周辺を含みますが、水鳥(カモ類、サギ類)
は少ないです。ただし、カワセミ、セキレイ類(キセキレイ、ハクセキレイ、
セグロセキレイ)は、個体数は多くないが通年確認されています。
(4)経年変化
2008年以前に確認されていて2009年に確認されなかったのは、オシドリ、
ハイタカ、オオヨシキリ(ただしセンサス外の記録あり)の3種です。
補足:
オオヨシキリは、毎年5-6月の一時期、土橋谷戸横のヨシ原に滞在しているよう
ですが、6月下旬の草刈りでヨシが刈られると観察されなくなります。
2009年に初めて確認された種は、コサギ(ただし2008年以前にセンサス外の
記録あり)、センダイムシクイの2種および、外来種であるホンセイインコです。
上記のうち、渡り途中や、本来の生息域から離れて出現したと考えられる種
としては、オオヨシキリ、センダイムシクイ、オシドリ、ハイタカの4種が
挙げられます。コサギはセンサス外で複数回の記録があるので、調査地域に
おけるコサギの利用時間帯がセンサス時間帯とずれていると考えられます。
ホンセイインコは、ここ1年ほどでセンサス外でも時々確認されるように
なったため、個体数が増えているか、生息域を広げている可能性があります。
以上より、2007-2009年期間において、外来種であるホンセイインコを
除いては、経年変化はあまりないと言えます。
補足:
2007・2008・2009年の春季には、センサス外で、アオバズクの鳴き声が
(2009年には姿も)確認されています。