昆虫観察会の報告
日時
2010年8月21日(土) 午前9時00分
集合場所
奈良上自治会館
参加人員
約30名
講師
佐々木正巳先生(玉川大学教授)
助手: 吉岡さん(玉川大学3年)
司会・進行
磯直行さん(奈良川源流域を守る会)
フィールド
はらっぱ広場
観察会スタート
9時10分頃から、奈良上自治会館屋内にて観察会スタート。
はじめに、奈良川源流域を守る会 渡辺会長から挨拶と、奈良町はらっぱの自然公園化提案についての話がありました。
続いて佐々木先生から、次のようなお話がありました。
最近
「蜂からみた花の世界」
という本を作りました。写真を沢山載せて蜜蜂の世界を詳しく書いています。ぜひ読んでみて下さい。
玉川大学にも昆虫採集をあまり経験していない学生がいますが、フィールドで虫と触れあうことは昆虫の勉強のためにも有用だと思います。
捕まえた虫は、どこでいつ捕れたかを記録して標本にするのがよいです。今日は標本の作り方のビデオを用意していますので、後でみんなで見てみましょう。
まずはみんなでフィールドに行ってみましょう。
会館前の奈良町はらっぱに出掛けて昆虫観察することにしました。
フィールドでの活動
9:20〜10:45、フィールドで活動しました。
子供達は元気に虫捕りに励んでいます。
みんな集って下さーい。
どんな虫が捕れましたか?
これは
ウスバキトンボ
ですね。
南方系のトンボで風に乗って飛んできます。
台風の後などにはたくさん飛んでいます。
写真提供: 昆虫エクスプローラ http://www.insects.jp/
これは
シオカラトンボ
です。
(メスはムギワラですよね?)
はい。でも若いオスもムギワラです。(えー!?)
成熟したオスが青色になります。この青はオスの婚姻色なんですね。
この写真は未熟なオス。少し水色が出てきた個体。
写真提供: 昆虫エクスプローラ http://www.insects.jp/
ここにはバッタがいっぱいいますね。
これは
イナゴ(コバネイナゴ)
ですね。イナゴは捕まえたら一晩置いてお腹の中をきれいにしてから調理して佃煮にするとおいしいですよ。
ちょっと珍しい植物がありましたので見て下さい。
これはネナシカズラです。寄生植物といって、他の植物にからみついて養分を貰って生きています。
自分では根っこも緑のはっぱも持っていませんが、花も咲きますし蜜も出ます。
これはミソハギです。庭木のサルスベリの仲間です。
こいつの面白いところは、にせものの花粉(シイナという)を持っているところです。
本物の花粉は一本だけ長い本物のオシベの先にちょっとだけついていて、下の方ににせもの花粉をいっぱい持っています。
ミソハギが群生しているのは、湿原がよい状態に保たれている証拠です。
これはセイタカアワダチソウです。
根っこから他の植物には有害な毒を出します。
このカナムグラの葉っぱは茎に近い脈のところが折れています。
こういう葉っぱには
キタテハ
の幼虫が隠れています。鳥から身を守っているんですね。
これはヤブカラシです。ヤブカラシの花にはピンクのものとダイダイのものがあります。
ダイダイのは今日咲いた新しい花で、蜜がたっぷり入っています。ピンクのは昨日かおとといに咲いたやつで蜜はほとんどありません。
昆虫はそういうことちゃんと知っていて、ダイダイ色の花にしか寄っていかないんです。
ヤブカラシは種を作らない植物です。つい3年程前にわかったことなんですが、3倍体というめずらしい構造の植物で種をほとんど作れないようなのです。
種を作らないのに花と蜜は作るというのはなんかおかしいですね。
このカタバミの葉っぱのうしろには
ヤマトシジミ
のタマゴがあります。
カタバミや、ギシギシ、スカンポなどの植物には酸っぱい成分が含まれています。この成分を嫌って普通の虫や動物(牛など)はカタバミを食べません。食べられないように進化したのですね。
ところが
ヤマトシジミ
は、食べられないように酸っぱくなったカタバミを好んで食べて成長します。
他の虫が食べないものをあえて主食にして競争しないでごはんが食べられるようにしたわけですね。
虫がいやがる植物としては他にドクダミがあります。
カイコ(カイコガ)は交尾するとその日の晩には卵を生み出すのですが、巣箱にドクダミを入れておくと卵を生みません。よほどいやなんでしょうね。
さきほどの
ウスバキトンボ
のように外から入ってきた生物を外来種というのですが、最近この辺でも増えて話題になっているのが
アカボシゴマダラチョウ
です。
元々は奄美大島にいましたが、誰かが持ち込んでしまい横浜のこの辺にも大分飛んでいます。
エノキの幼木に卵を産んで増えるようです。
写真は里山公園で観察したものです。
逆の例ですが、ここにいる
マメコガネ
というコガネムシですが、これはアメリカでは日本から来た害虫として有名です。
あちらではこれを「ジャパニーズ・ビートル」とよんでいるようです。
今日の成果など
10:50頃に自治会館に戻り、先生といっしょに今日の成果などのお話をしました。
●どんな虫が採れたかな?
子供達の虫籠にはいろんな虫が沢山入っています。
バッタ、カマキリ、トンボ、チョウ、などなど。
これわかりますか?
これはサシバエの仲間で寄生バエの一種です。
このハエは葉っぱに卵を産みつけておくのですが、これをイモムシが食べますと、イモムシのおなかのなかで幼虫になります。
その後体内で成長して最後、こうやってハエになるんですね。
これは
ショウジョウトンボ
ですね。
アカトンボと呼ばれる種類はいくつかありますが、これはその中でも本当に真っ赤なトンボです
これは
マルカメムシ
ですね。臭いです。ヘキセナールというアルデヒドがにおいの元です。
透明の容器に居れて振ると容器が白く濁るほど臭い物質を放出します。
ツマグロオオヨコバイ
ですね。これは稲の害虫です。
これは
ミノムシ(ミノガ)
です。5年ぐらい前にミノムシの病気が流行してこの辺では絶滅寸前になりましたが大分復活してきました。
ミノムシのメスは一生ミノの中で暮らして外には出て来ません。卵もミノの中で産んで、小さな幼虫がミノから這い出して来ます。
写真提供: 昆虫エクスプローラ http://www.insects.jp/
ツマグロヒョウモン
ですね。これも元は南の方にいた蝶です。
この辺で繁殖するようになったのは地球温暖化の影響もあるでしょうが、幼虫の餌となるパンジーなどのスミレ類が冬でも公園などに植えられるようになったことも影響していると思います。
●標本の作り方
ビデオを使って昆虫標本作りのポイントを勉強しました。
蝶、カブトムシ、バッタ、ハチ、トンボ の標本作りを見せていただきました。
標本作りは思っているよりも簡単です。
次のような点に注意しましょう。
展翅版などを使い、ハネ、脚、触覚をピンで固定して形良く仕上げること。
バッタ、トンボ、ハチなどの内臓は腐り易いので、内臓を抜いてから標本にすること。
よく乾燥させること。
出来上った標本は、高温多湿の環境には置かないこと(カビたり変色したりする)。
●鈴虫のプレゼント
奈良川源流域を守る会会員の高橋様から鈴虫のプレゼントがあり、希望者にお譲りいたしました。
11:30頃、観察会を終了いたしました。
お暑い中お集りいただいた皆様、佐々木先生、吉岡さん、本日は大変ありがとうございました。
(了)