昆虫観察会の報告


日時
2007年8月25日(土) 午前10時
集合場所 奈良上自治会館
参加人員 約30名
講師 松香光夫先生(玉川大学)
アシスタント 宮川真理子さん
司会・進行 山田美那子さん
フィールド はらっぱ広場
配付・回覧資料 (1) 昆虫各目の容姿と系統(翅のつきかたに注目した資料)
(2) 里山公園で3年間に観察された生物リスト
(3) (2)の写真リスト
(4) 里山公園観察昆虫の代表的な種の入った標本箱


観察会スタート

10時ちょっと過ぎから、奈良上自治会館屋内にて観察会スタート。
司会の山田さんから本日の観察会のスケジュール説明があった後、松香先生にバトンタッチしました。

松香先生から、配付された資料などを使った昆虫の楽しいお話がありました。

虫の大きさの話
小さいものがほとんどだが、ヨナクニサン(八重山地方にいる蛾の一種)のように20cm強のものもいる。
子供達からはヘラクレスオオカブトとかアトラスオオカブトの声。みんなよく知ってます。
昆虫のからだの特徴
足が6本、ハネ4枚。
ムカデ、クモ、ワラジムシ のように足がいっぱいあるやつは昆虫(網)ではない。
ハネのない昆虫(ノミなど)もいるが、もともとあったのが退化した。
先生が配付なさった資料はハネのかたちや付き方で昆虫のグループ(目)を分類したもの。また先生が持ち込んで下さった奈良地区でよく見られる昆虫の標本を皆で観察しました。
分布の推移
奈良川源流域を守る会から配付した、里山公園夏期昆虫リストを見ながらの説明。
モンキアゲハは南方系の蝶だが最近は奈良地区でも普通に見られるようになった。30年ほど前は居なかった。温暖化の進行とともに昆虫の分布も変わってきている。

「まだ少しでも朝の涼しさが残っているうちにフィールドで虫の観察をしましょう」ということで、一同勇んで虫採りに出掛けました。


フィールドでの活動

10:30〜11:30の1時間ほどフィールドで活動しました。
子供達が網をふるって元気に原っぱをかけまわる姿は、見ているこっちまでわくわくしてきます。




前日からしかけておいたベイトトラップ(地中埋め込みトラップ)を回収し、どんな虫が採れているか観察しました。






今日の成果など

11:30頃、暑いフィールドから涼しい屋内に戻ってきて一息ついた後、先生といっしょに今日の成果などのお話をしました。

どんな虫が採れたかな?
子供達の虫籠にはチョウ、トンボ、バッタなどがわんさか入っていました。 ベイトトラップにも、シデムシ、オサムシ、ハネカクシなどが入っていました。 なぜかヨコエビが入っています。ヨコエビが入ったトラップのあった場所はじめじめした用水路跡でした。 ヨコエビの仲間には陸生のものもおり、落葉や石の下などに棲息しているとのことです。
フィールドによる採れる虫の違い
奈良町はらっぱのような背の低い草地だと、バッタ、カマキリ、チョウ、トンボなどが採れますが、カブトムシ、クワガタは採れません。


昆虫の種類
現在地球上に棲息している昆虫は、確認されているもので約100万種ぐらい。
未確認/未発見種を入れるとこの10倍(=1,000万種)ぐらいだろう。
特に土中に棲息する種類については研究が進んでいないとのこと。
土中昆虫を詳細に研究すれば国内でも新種発見はそう難しいことではないそうです。

参加者から松香先生に質問

今日のフィールドでの観察では、同じ種類のバッタでも生れてすぐの小さいものや、かなり大きいものがいました。どうしてですか?
バッタの仲間は、幼虫と成虫の境がなく(不完全変態)小さい時から大体同じような身体付きで大きくなっていきます。
成育段階が違う個体が同じ場所に住んでいることもあります。
これらの個体は孵化の時期が違うものです。
今日沢山観察できたショウリョウバッタの場合、タマゴが産みつけられる時期は秋でこれが越冬して春〜夏に孵化します。
記者注:
不完全変態とは「蛹を経ず幼虫が直接成虫に変態すること」であり、「幼虫と成虫の形態が良く似ていること」を指しているのではありません。

はらっぱにはカミキリムシはいませんか?
小型のカミキリムシの仲間にははらっぱにいるものもいます。
カミキリムシの仲間は翅がきれいなものが多いですが、大顎で木をかじってだめにしてしまうので害虫扱いされています。
幼虫は鉄砲虫と呼ばれてます。

タマムシも害虫ですか? あんな綺麗な虫が害虫だとするとショックです。
害虫と言って良いと思います。
ところで、タマムシの翅の色は翅自体に色があるのではなく、表面にあるこまかい凹凸で光を反射して出しているそうです。
見る角度によって色が変るので、あいまいな政策のことなどをタマムシ色と言ったりするんですね。
記者注:
ヤマトタマムシの幼虫は枯木をエサにして育ち生木は食べません。 一見食害はないように思えますが、伐採し貯木した時に産卵し建築や家具用途の材の価値を損なわせる、という意味で害虫と認識されているようです。 またタマムシの仲間には生木を食べ大規模な食害を発生させるものが沢山いるようです
記者注:
タマムシの翅は表面にこまかい凹凸がある層が10数層重なりあってできており、光の干渉によって見る角度による色の違いが出るそうです。 原理としてはシャボン玉やCDの表面と同じです。


この他、虫にまつわる雑多な話題についても、楽しくお話いただきました。
12:20頃 観察会を終了いたしました。参加いただいた皆様、暑い中お疲れ様でした。

(了)