1998年5月10日発行
第4号
「奈良川源流域を守る会」
nara@interlink.or.jp
谷戸は命のゆりかごであると言われていますが、生物の命を育む水の大切さについては言うまでもありません。水がすべてといってもいいくらいなのです。しかし、今年は周辺の開発が進んだせいか、私の屋敷の中の泉の水の水量もめっきり少なくなっています。
思えば、私の幼い頃の谷戸は、豊かな水に恵まれていました。今の玉川大学の工学部の下にぼこぼこと音を立てて、水底の砂を巻き上げ、冷たい泉が湧いていました。絶滅したと思われていたのに最近発見され話題を呼んだゲバチ(ナマズの一種)や、ホトケドジョウもたくさんいました。尾根の絞り水は本山池に集まり、池には泳げばぶつかるほど、ゼニタナゴが生息していました。夏には水泳、冬にはスケート、四季を通じてタナゴ釣りを楽しむことができたのです。
その後、本山池は護岸工事で鉄板を打ち込んで囲んでしまって、自然の地下水が流れ込まなくなり、また、川は河川改修で三面コンクリート化、そして今回の福祉施設の建設に伴って水路まで変えられてしまいました。人は巨費を投じて川や池を変えていきます。そして、水環境を台無しにし、生物の住めない場所に変えてしまったのです。
今年、私の池で、大雨の後、いつもならジャブジャブ音を立ててよってくるコイやハヤがすっかり弱り、餌をやろうとしても水面に波も立たずシーンとしていたことがありました。私ははっとしました。去年の夏の大雨の日、同じようなことが起こり、ハヤが約50匹も浮いて死んでしまった経験があるからです。大急ぎで池の水を抜きジャージャーと池を洗って水を全部取り替えて、魚たちは事なきを得ました。
自然の雨の中に何がとけ込んでいたのか。大気の汚染はここまできているのだと思うとぞっとしました。大地に降り注ぐこの雨は、遅かれ早かれ、人間たちの健康もむしばむに決まっています。
一方、県の内水面試験場の何年にもわたる努力で、池から持っていった絶滅危惧種のゼニタナゴの子孫が去年かえり、復元の希望が見えてきました。そして今後とも現地で復元するために協力してくださる旨約束してくださいました。試験場の研究や努力も、私が、ゼニタナゴやホタルやその他の谷戸の生物たちのために力の及ぶ限りしてきた努力も、大きな環境の改悪の前では無になってしまいます。
やっと守ってきた絶滅危惧種のゼニタナゴだけではありません。本山池の水がまわってくる私の池のシジミさえも小さいのが見あたりません。そういう生物達が、がんばっても絶えていくのかと思うと残念でなりません。
谷戸の将来にとって今回の巨大施設と住宅で川をつぶし西谷戸をつぶす開発計画が、致命的なダメージを与えるのは目に見えているのです。これ以上の自然破壊を何とかしてくい止めたい。物言わぬ生物達の悲鳴が聞こえるようです。
奈良川源流域の生態系は、今すごい勢いで破壊されています。西谷戸の約半分(下流側)が土盛りされ、施設建設が進行しているほか、谷戸を貫く都市計画道路や、上流側の宅地造成の計画があり、これらも具体化の恐れがあります。源流域の生態系の現状とこれからの展望を特集しました。
谷戸の生き物は、他の生き物たちと共生しています。また、その生き物たちは自然環境なしには生きていけません。生き物とそれを支える環境が一体となって、生命を育んでいるのです。このまとまりは「生態系」と呼ばれています。
生態系とは、生物と環境のまとまりのことです。その構成要素はお互いに深い関係にあるため、生態系はその全体を保全しなければ維持できません。
この奈良川源流域は、全体で一つの生態系を成しています。このことは、土橋谷戸に営巣する猛禽類チョウゲンボウが西谷戸をえさ場としていることからも明らかです。
本谷勲先生(農工大名誉教授)は西谷戸の保全の重要性を説く中で、「谷戸生態系は、個々の要素ばかりでなく、全体を一体として保全することが重要」と述べています。しかし今、西谷戸の下流側が破壊され、谷戸の生態系全体が危機にさらされているのです。
さらに、その影響は谷戸の中だけにはとどまりません。西谷戸・土橋谷戸は、玉川大学の森から源流域の緑地、TBSの保存緑地、こどもの国、寺家ふるさと村と続く大きな緑地帯(グリーンベルト)の一部となっています。西谷戸の破壊はグリーンベルトの分断であり、多様な鳥や獣の生息環境である美しい緑地帯が消えるということなのです。
ここで、破壊が進んでいる谷戸の現状をみてみましょう。
西谷戸の下流側では、現在、全長一五〇メートルの巨大施設の建設が進行中です。源流域である西谷戸・土橋谷戸は湿地帯のため、建設予定地には大量の土が運び込まれ、谷戸が埋めたてられました。さらに、地盤を固めるため約一二〇〇本ものコンクリート柱が打ち込まれ、谷戸の生態系の豊かさを支えていた土壌は、ずたずたにされてしまいました。
広い緑地が失われ、虫はもちろん、ハヤブサやチョウゲンボウが狩りをする勇壮な姿も見られなくなりました。鳥類の全体数も激減しています。
コンクリートの柱が打ち込まれただけでなく、建物の地下に遊水池をつくるという設計のため、地下水脈が遮断されてしまいました。地下水の水位の変化は生態系、特に植生に大きな影響を与えます。また、地下水脈が変わったためと思われる地盤沈下が起き、既に家が傾く、道路がへこむなどの被害が続出しています。
奈良川と小田急学園奈良との間にある斜面緑地は、残されたわずかな緑地の一部ですが、都市計画道路の建設に伴い一部が削られる予定になっています。
地形をいじることは生態系の破壊に直結しています。西谷戸の入り口にあった「ことり橋」が突然なくなったことにショックを受けた人も多いと思います。現在この部分は埋め立てられ、奈良川の水は細い水路を通っています。実は、奈良川の流れが変更されるのはここだけではありません。現在の川の流れにかかる形で都市計画道路が計画されているのです。
「小川アメニティ」という計画もありますが、将来像ははっきりしていません。
この谷戸の開発計画は、現在破壊が進んでいる西谷戸の下流側だけが対象ではありません。上流側は道路建設と宅地造成の計画があり、西谷戸全体がつぶされるのです。
西谷戸は市街化調整区域内に指定され残されてきた貴重な緑地です。それを、生態系の保全、特に谷戸・里山の保全の重要性が高く認識されている今になって開発するというのです。
計画では、この細長い西谷戸に二本の道が平行して通ります。一本は現況道路を拡幅したもので、もう一本はどこにもつながる見込みのない幅一六メートルもの道路です。特に後者は造る必要性が全くなく、緑地をつぶすためだけに税金が使われることになります。
また、宅地やマンションが過剰供給で問題になっている時代に、わざわざ緑地をつぶして宅地造成をするというのも理解できません。
西谷戸の上流部分は、ホタルの生息地に隣接しています。ここまで住宅が押し寄せ、車が押し寄せたら、ホタルの生息は不可能となります。ホタルはかすかな光でオスとメスが呼び合うので、家の灯りや自動車のライトが照らし続けるようでは、繁殖できないのです。
保全生態学の専門家である鷲谷いづみ先生(筑波大助教授)は、この谷戸のことを「生物多様性の最後の砦」と表現しています。身近なこの谷戸の生態系は、破壊してはならない、かけがえのないものなのです。しかし、ここまで見てきたように、奈良川源流域の生態系は危機に直面しています。
まだ残っている緑地をいかにして守り次の世代に残していくのか、また、改変の始まっている奈良川をいかにして生命の源といえるような川にしていくのか、いま私たちは問われているのです。
昨年は地主さんのご厚意により、思いの外大きな田んぼが借りられました。小さな田で実習するつもりで田おこしをした会員達は去年の3倍はある田んぼに大喜び。広々とした田にゆったりと早苗が並んだうれしさ、大豊作の稲穂のズシリとした重み、みんな忘れられない想い出となりました。「生きていて良かった」と言った年配の会員もいました。会長の年間の献身的なご指導ご苦労に感謝の気持ちでいっぱいです。
九六年に引き続き、奈良川源流域メンバーによる米作りが始まった。九六年度の野川会長へのおんぶにだっこ、脆弱都会派レクリエーション大会状態を脱し、今度こそいちから自分たちの手で! と心も新たにの第一日目。
まず、半年間休眠していた田んぼを「起こす」作業。前夜の雨のせいもあり、かなり水分量の多い、深めの田んぼに裸足で入る。踝からふくらはぎまで、ひんやりとした泥の中にズブズブと浸かっていく感覚が心地よい。「この田んぼは去年のよりも深い」ということではあるが、深い底には何があるのかは不明。
ゾウさんのフォークの様なマンノウ、それより少し刃の長い、三本鍬ないしは四本鍬を使って、要するに泥を耕す。コツは昨年の稲刈りで残った株を天地返し……。しかし水分の多い泥は予想以上に重く、深く差し込んだマンノウがなかなか持ち上がらない。まさに大地との格闘。日頃甘やかしきっている軟弱な精神と身体に喝を入れながらも、一株そして一株と歩みは重い。隣では実にさくさくとコトを運ぶ御仁の姿……。う~ん……。
泥をひっくり返すと、下からはネズミ色の粘土質の土が現れる。粘土質の土は、大半の植物にとって有り難いことではないはずだけれど、稲は大丈夫なのだろうか?根腐れは起こさないのだろうか?水稲という位だから、水はけについてのウンヌンはしないのか……チラと疑問が湧くが、素朴な質問をしている余裕もない。「うんとこしょ、どっこいしょ」と、大きなカブのおじいさんよろしく、ひたすら全身の力を込める。二十分もしない内に、両掌にマメが出来てくる。
二十坪程の田んぼを代わる代わる十数人で耕して、ほぼ二時間の作業。初夏を思わせる陽気で一気にほころんだ桜が、遅い午後の光に輝いている。これで良いのか悪いのか、とにもかくにもひっくり返された泥の固まりでボコボコになった田んぼに、堰を外された水路から、水がゆっくりと流れ込んでくる。土、光、風そして水、生きとし生けるものの全てを包み、この谷戸にはゆっくりと時が流れていくのだ。
天気の都合で、急遽田植えを決定。会長のご指導で泥深い田に一束一束植えていく。温かくぬるんだ水面がきらきらまぶしく、例え小さい田でも、多少曲がっていても、自分たちのおこした田に並んだ早苗をみる誇らしさ。深い深い大地との一体感に酔いました。
来る日も来る日もオフィスのパソコンの前に座り一日を過ごす私にとって、唯一のなぐさめは、窓の外の四角なコンクリートの群の一角に見える近くの女子大の木々だったりします。今どこかの丘にいて、木々の間をそぞろ歩き、小川の清らかな水の流れに足を泳がせているのだったらどんなに素敵だろう……そんなことを度々想像しては、しばし愉快な気分になる私ではありますが、まさか膝まで泥に浸かるとは、正直いって思いもしませんでした。
友人のナオミ(オーストラリア人:訳者注)は、田植えと聞いて興味津々といったところです。「田植え!? すごいじゃない! 泥んこの中歩き回るんでしょ? でも、ライスプラントって一体どんなふうなの? どうやってお米になるのかしら?」「小麦みたいなんじゃない?」そう答えたものの、実は私も何も知らなかったのです。考えてみれば、毎日毎食頂くお米が、実際にどのような姿をしていて、どのように育っていくのか、まったく想像できないというのは、とても恥ずかしいことです。スーパーで、袋詰めにされているお米……そんな限られた知識しかない私にとって、田植えの実体験というのは、お米のイロハを知るまたとないチャンスでした。
こどもの国駅に降りたとき、私の前にあったのは、日本ならではの美しい緑の洪水でした。私の国、オーストラリアでは、夏はとても乾燥します。オーブンから吹き付けるような風で、木々の緑はすっかり色あせてしまうほどです。それに比べ、日本の緑は、ずっと涼しげで潤っています。そして、どこかほど近いところに必ず川が流れています。そんな自然の差異が、オーストラリアと日本の、農業の違いにも現れているのでしょう。真っ青な空の下に延々と広がる小麦畑とトウモロコシ畑。羊達の群。どこまでもどこまでも続く大地。それがオーストラリアなのに対し、ここ日本では、あらゆる木々が、畑が、そして田んぼが空間を埋めているようです。そのすべてが、きらきらと太陽の光に輝きながら……。
田んぼでは、一束の稲の苗を手渡され、植え方を教わりました。まず思ったことは、「簡単そう」。前にオーストラリアでやったことのある「牛の乳搾り」よりやさしく見えたのです。ですが、それ程単純じゃないわ、ということを思い知るまで、さほど時間はかかりませんでした。一生懸命に泥の中に植え込んでいるはずなのですが、苗はなかなか安定せずに浮かんできてしまいます。そうかと思うと、今度は深く植えすぎてしまったり……。
私の前では会長さんが模範演技なさっていました。まさにエキスパートそのものの動きです。リズミカルで軽やか、正確で自信に満ちたその姿を見ているだけで楽しくなってしまいます。おまけに私の両足は窮屈な靴を脱ぎ捨て、ひんやりとして柔らかい泥の中なのですからなおさらです。
今、このたびの経験を振り返ってみてつくづくと感じることは、自然のない生活などできない、ということです。プロフェッショナルな農業の人にはなれないとしても、コンピューターの前で過ごすのと同じくらい自然に包まれて暮らせたら、どんなに幸せだろうと思います。
今、私がほんの少しお手伝いをしたあの苗たちが、どんな風に育っていくのかとても楽しみです。そしてナオミにも教えてあげようと思ってます。
稲刈りに 集いし人の 皆やさし ちちははのごと ここは古里
幾十年振りに皆さんの力を借り稲刈りに参加できた喜び、豊かに実った稲穂、その稲をわずかでも束ねる事の出来た感触は忘れ得ないであろう。山里の古い農家の生まれである私は、古里と土にそむいた私。どこかに父の声が聞こえてきた。この螢飛び交う地を、終の地と定めて移り来しものを、行政は消そうとしている。他に健康にとって良好な土地を保有しながら、源流域を化学薬品で汚し、市のお役人は何を見ているのですか。此処は自然を生かして障害者の方の精神的保養地、お花畑や自然農園をつくりボランティアや学童たちとのふれあいの場にすべきでしょう。小鳥達のため、里には木の実や果樹を植え、自然農法で螢や生物をいとしむ貴重な農業人の土地には踏み込まないで下さい。せめて今からでも規模を縮めて、めぐりの木々や花達を守るべきです。
かわせみよ ちょうげんぼうよ 許してよ 今日も破壊の杭を打ちいる
「おいしいパンだ!お芋だ!」
十一月二十三日、風がやや強い快晴日。
収穫したお米でおにぎり、お餅、パン、焼き芋、豚汁と盛り沢山の収穫祭は盛況のうちに終わりました。私達が担当したパンはベーコン、ドライフルーツ、ハーブの三種、パン生地を竹の棒にクルクル巻きつけ焚き火の炎の廻りにさして焼いたものです。作るプロセスも楽しく塩味のきいた焼きたてのパンは大好評でした。
野営などする時に利用されとても重宝なパン。最初は火力が強く焦げないよう廻し焼きするのがポイント! 火が落ち着いた頃には香ばしい、ふんわりとしたパンの出来上がり。特にベーコン巻は好評でした。その後は子供達、女性の好物の焼き芋。あつあつ、ホクホクの甘味のある焼き芋が口の中に広がり秋の味を満喫しました。時折パン、お芋を焦がし、ついでに自分の髪の毛も焦がし楽しかった収穫祭でした。皆さん次回もぜひ竹のパンを召し上がりに来て下さい。
アメリカ人である私にとって、日本の花見の習慣は、珍しくもあり、また少し奇異なものでもあります。満開の桜の下での、飲めや歌えの大騒ぎは、お酒をたしなむ環境になかったアメリカでの生活からは、想像もつかないものだったのです。そのような意味でも、このたびの「奈良川源流域を守る会」主催のお花見を、私は心から楽しむことが出来ました。木立ちの間をそぞろ歩き、桜にも様々な種類があるのだということを学び、また、玉川学園内の桜が、かつてほどの美しさを誇らない訳等を、興味深く聞かせていただきました(学園の桜は刈り込まれているそうです。そして、桜の木の刈り込みは、桜の命を縮めてしまうのだということを、初めて知りました)。
また、桜の美しさもさることながら、今回のお花見に、徳見さんが参加されたことは、私にとっても、他の会員にとっても大きな喜びでした。彼女を背負う人、その車椅子を運ぶ人、みんなで池のほとりを歩き、丘を登り、坂道を下りました。桜や桃に彩られ静かに水をたたえる池、足下に広がる田園風景、ところどころにピンクや白の絵の具を散らしたような丘陵、美しい自然をともに分かち合えたことが、何よりも素晴らしい思い出です。
六月一日(日)、本谷勲先生と「奈良川源流域を守る会」の人達は、宮本さんの所から野川会長の案内で尾根道を通り本山池に出ました。
池には亀や鯉も泳ぎ、五月の陽光に照らされた水面には、モネの絵のスイレンも咲いてます。谷戸見ヶ丘に登り、緑とオゾンのにほひにつつまれながら、会長からは、開発による尾根と谷戸の遍歴を、先生からは、コナラの幹を手でなでながら、長い歳月による谷戸と尾根の形成や、木々が葉を全身に広げて雨を受け、小枝から幹に、ゆっくりと時間をかけ、大地にしみ通り、やがて畑や田圃をうるおすとうかがいました。先祖がその地に適したところに、畑や田圃を作り、或いは植林し、池を掘り、水路を造り里山ができるお話を聞きました。
空も水も土も、そこに生存する微生物までに至る動植物に対し、その一員である人間は、総体的な環境をこわしては、恩恵を受けた自然と先祖に対し申し訳なく、それ故、子孫に云い訳がたちません。
先日、ラヂオで聞きました、河が汚れ海が汚れ、魚の少なくなった漁師さんが山に植林している話を聞きました。
地球全体からは、ミクロのミクロのこの谷戸ですが、地域住民はそれを守る義務があると思っています。
私事ですが、「蛍を殺すな!」のムシロ旗を立てました。工事が進めば、はずされるでしょう。でも、私は再び旗を立てるつもりです。それは、私にとって「禁じられた遊び」なのです。
御多忙の中、本谷先生、ありがとうございました。
七月二十七日、玉川大学の先生他二名の助手の方を迎え、多勢の参加児童を中心に、楽しい半日を過ごしました。
雄の背中に卵を産み付け、その卵を雄が世話をして孵す「背負虫」の話から始まり、「蜜蜂が蜜を見つけて巣に帰り乱舞する。その踊り方で情報を発信して、どのくらいの距離にどんな花の蜜があるか等といった事を仲間に伝えている。蝉の翅の翅脈を見て、脈の色が緑がかっていれば老人?だと。あぶと蜂の特徴の違いは、あぶは翅が二枚で針を持たないが、蜂は翅が四枚で針を持つ。紋白蝶の雄の翅は紫外線を吸収するので見えにくく、雌は紫外線を反射するので見つけやすいし、毛足長蜂が木の皮を唾液で固めて紙状にして巣を作るのをヒントに、パルプが作られた」というような数多くの面白いお話を、久々の暑い日差しを浴びながら伺い、その後子供たちはカイコをお土産に頂いて、毎日新しい桑の葉を与えて、どんな成長をするかを体験する良い宿題を頂いて楽しい観察会が終了しました。
(次のページをご覧ください)
お月見を予定していた九月十四日は、台風の影響であいにくの空模様、お月様は期待できませんでした。会場に一歩足を踏み入れると賑やかな子供たちの声と、野川流家元、喜一先生の活けられた見事なお花に圧倒されました。秋の風情が豊かな谷戸そのままに威厳を持って私たちを迎えてくれました。
悪天候にもかかわらず参加者は子供たちを中心に多数で、玉川大学の先生、学生さん二人から身近な親しみ深い虫達のお話を興味深く聞いた後、実際に虫の声を聴きに暗い谷戸の野道に出ました。
雨にも負けず虫たちは元気に鳴いています。私たちも一生懸命耳を傾けました。先生、学生さんが熱心に説明をし質問にも答えて下さいます。コオロギにもツヅレサセ、エンマ、ミツカド、オカメ等々があることを知り、カネタタキという小さな楽しい名前の虫、木の上で声高く鳴くアオマツムシ等も知りました。静かな夜ですから木から下りてそっと鳴いて欲しいと思いました。
お月様の顔は見えませんでしたが、立派なお花、可愛く並んだ月見ダンゴ、子供たちの笑顔、それを見守る大人達、そして無限の夢幻の生物植物を包み込んだ神秘な闇の谷戸。来年も自然のままの谷戸でのお月見を切望します。
昆虫観察会では、先生からのすてきなプレゼントがありました。まっ白なカイコです。みんなそれぞれ頑張って育てて、まゆをつくり成虫になるまでの不思議な変化を見とどけました。はりきって育ててくれた井汲さんのご兄弟に感想を寄せていただきました。
くわの葉っぱをもりもり食べて、うんちもよくしたよ。小さいのもがんばって大きくなってさなぎになった。くわの葉っぱは早おきして毎日とってきたよ。奈良幼稚園の畑のくわの木まででかけて。なくなったらどうしようと思って心配したよ。
事故死1ぴき。かわいそうに落っこってお父さんにふまれたよ。まゆを作るとき、さわったら糸がかたくてびっくりした。6ぴきガになって、うすみどりの卵をうんだ。みどりの卵が茶色になったよ。カイコ自身もまっ白だったのが茶色になったよ。かわいかった。
ちっちゃくて、かわいいカイコちゃん。
毎日くわの葉をおいしそうに食べています。
だんだん、太くなってきて、長さが8センチまで、大きくなったよ!
いきをかけると、かおを、ぺっちゃんこに、します。そして、自分を、大きくみせました。
よくたべる。カイコちゃん。
やがて、てまが、かかった カイコが、糸を、だしました。
朝になると、まゆになってました。
まゆの大きさは、3センチ!
そして、ガになりました。
カイコガは、2センチぐらいです。
かんそう。
たいせつにそだてて、ガになったカイコガ、しそんを、のこすために、がんばってね。カイコちゃん。
・・・・・・・・・・
夏休みの間に劇的な変態の過程をみせてくれるカイコは最高の教材でもありました。先生ありがとうございました。
後日、数人の親御さんから、卵をどうしたらいいのかお問い合わせがあり、先生におうかがいしたら、「冷蔵庫に入れておいて春に桑の葉が茂ったら出してあげると良い」というお話がありました。カイコは季節による卵の産み分けをしており、親になるまで桑の葉があるとき産む卵は白く、秋が近く春まで待たなければいけない卵は茶色いそうです。また、カイコは数千年、人間が飼育してきたいわば家畜で、逃げることも飛ぶこともできないそうです。その習性に、人間の罪と「あわれ」を感じてしまいました。
昨年はヘイケボタルが毎晩五〇匹程でました。一昨年は激減し存続すら心配したのですが、だいぶ回復し胸をなで下ろしました。メスが多いのが特徴で、今年は期待できると思います。
一方、ゲンジボタルは奈良川を三面コンクリートに改変したとき、まず姿を消してしまいました。ゲンジボタルはヘイケボタルに比べて、大型で、光も強く、ゲンジボタルの乱舞する美しさは忘れがたいものがあります。川沿いに明かりがともったようで、夜道にちょうちんさえいらないほどでした。
昨年は、会員で、港北ニュータウンの自然保護活動の中心となっている関さんが、お忙しい中、水槽を抱えてきてくださいました。ご自身が飼育なさった貴重なゲンジボタルの幼虫約三十匹を放ちました。時期的に遅かったこともあり、成虫になったのが確認できたのはわずか5匹、うち最後の1匹だけがメスでした。オスとメスが日をおいて成虫となったため、自然繁殖は望めません。
関さんにご報告したところ、うまく育ったら再度分けてくださるとのことです。ありがたいご協力に感謝しつつ、池をホタルやゼニタナゴのために3倍ほどに広げ、あきらめずに再度挑戦するつもりです。 (会長談)
スーッスーッと飛び交うホタル。その名の通りヘイケボタルはいかにもかすかに、か細く、それだけに、趣深い守ってあげたいホタルです。
田の縁には数百人の見物人が集まり、大盛況のホタルの夕べでした。
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以前から知人であった山田さんのおさそいで会員になりました。青葉台に住んでいます。
過日、「お祭り」で伺った時より、今回「螢をみる会」に参りましたら、瞬く間に高い目隠しがめぐらされてしまい驚きました。私は、ほぼ一ヶ月に一度近隣の山歩きを楽しんでおりますが、近郊の山々の中腹は、ほとんどゴルフ場になり、均一な緑で、木々は残っていません。そこを通った水……恐らく除草剤が使われているのでしょう……を、私共は孫子の代まで飲まねば生きていけないのです。
もういい加減で、私共は自然をとことんまで搾取する生活をやめ、共存するように方向転換していかないと、しっぺ返しを受けることになりかねません。
奈良谷戸のようなグループが、日本中で大小様々に声をあげ、何とか行政を変えようと動いているはずです。めげずに明るい皆様の様子に、私も元気を貰った気がしています。
開成町では今年、農地改修の整備事業で田をつぶして土を替え、川も人工的なものに作り替えられました。そのため飼育したホタルを放せるところも1カ所だけになってしまいました。一旦壊したところを復元して自然発生させるのは大変難しいことです。ホタルが自然発生する貴重な奈良の谷戸の環境をぜひ守ってください。
緑に囲まれた源流域の西谷戸に、小島が浮かんでいるような、ハーブ・ガーデン「ナチュラパス」があります。
オーナーの野川進さんが北海道旅行でラベンダー畑に魅せられ、苗を車いっぱい運んできたのが 十年以上前、自然を生かした仕事で生きていこうと決心して、念願のハーブ・ガーデンをオープンしたのは昨年三月のことです。今ではその規模約四千平方メートル、二百五十種以上のハーブと、ブルーベリー、キウイ、プルーンなどの果樹が植えられています。
ティールームからは、木道を通って自由に散策できる約五百平方メートルのガーデンが眺められます。ハーブ・ガーデンの向こうの里山の屋根に美しい夕日が沈むのが見えました。お客様たちが、「ここに来るとせいせいします。近くにこんなに良いところがあるとは知りませんでした」「ブルーベリーの季節に来て以来、ハーブが大好きになりました」「可愛いウサギに会えるのが楽しみ」などと、ケーキとかぐわしいハーブティーを楽しみながら語ってくださいました。
自然派の野川さんは生き物が大好き。ピーターラビットとドアーフの間に生まれたミニウサギが今十三匹、次の十~十五匹の赤ちゃんウサギが穴の中で産まれています。ガーデンの奥ではヤギものんびり草をはんでいます。
桜の木の下で春の園芸作業の手を休めて、「ナチュラパスの周りを開発し、住宅を建てる計画があるのをほとんどの人が知りません。知った人みんなから『緑を残すように頑張って下さいね』と言われます。周りの自然をそのまま残して、人も動物も植物も緑の中で楽しく暮らす理想郷をつくるのが夢です」と語る野川さん。
犬の散歩の途中に立ち寄って犬と一緒にティータイムが楽しめるように、ウッドデッキもできました。
広いハーブ・ガーデンには、ハーブの他にムスカリ、ミニチューリップもたくさん植えられ、百十四種、九百球近い水仙も咲きそろいました。今年は実のなるもの、セージなどの花のきれいなものを増やすそうです。
開園:午前10時~午後5時
水曜日定休・入場無料
電話:045-962-1683
二月七日、源流域のバードウォッチングの予定日の前日、野川会長宅の軒先につるしてあった、二つの鳥かごの小鳥がツミに襲われました。よほどえさに困ったのでしょう。獲物がうまく引き出せないため、かごの近くから離れようとしないので、目の前で見ることができました。鋭いクチバシ、黄色い目、まさに猛禽類の迫力です。
翌日のバードウォッチングの時、ビデオで見て、皆息をのんでしまいました。
奈良川源流域にはゼニタナゴという魚がいます。今では絶滅危惧種に指定されている貴重な魚ですが、かつては本山池にたくさん生息していました。
このたび、世界規模の自然保護団体である世界自然保護基金(WWF)から、当会の「ゼニタナゴの生息地を復元し奈良川源流域を保全する活動」に対して、一九九八年度自然保護事業助成金四十万円が支給されることになりました。
今年度からは「ゼニタナゴの里」を目指して復元に取り組んでいきます。
三月十三日、本山池でカワウの真っ黒な姿を会長が目撃しました。夕方空を渡っていくカワウの群を見上げることはあっても池に降りたのを見たことはないそうです。今年はスズメすら少ない異常な年で、おそらく多くの鳥がエサ場を失い死んでいると思われます。
西谷戸の施設建設工事によって斜面緑地が崩れる恐れがあり、緊急に土止めの工事が行われました。西谷戸に面した小田急学園奈良団地の地盤は元々弱く、特に枝谷戸の田んぼを埋めて盛り土した部分は大変危険です。すでに、家が傾いたり土台がひび割れたりする被害が出ています。
関東大震災の時、一瞬のうちに帯状に崩落したのを野川会長の叔母が目撃しています。
コジュケイのチョットコイ、キジのキョーという縄張り宣言の声が終日谷戸に響いて、鳥たちがつがいになる季節です。もうすぐ可愛いひながかえることでしょう。
連休のバードウォッチングの時にはよちよち歩きのひなが見られるかもしれません。
源流域の里山には花木が多く、梅、桃、桜が次々と開花し、五月になって朴の白い花が咲いています。谷戸の田んぼには水がはられ、コチドリやカルガモやサギが遊んでいます。種もみがまかれて、会の田んぼもいよいよ始まりました。
昨年は猛暑の頃、会長、山口さんを中心に道の草刈りを何回も行いました。今年はクズがジャングルと化す前に、みんなで行いたいと思います。ご協力ください。