昆虫観察会の報告


日時
2015年8月30日(日) 午前9時00分から11時20分
集合場所 旧奈良上自治会館
参加人員 約11名
講師 松香光夫先生(玉川大学元教授)

天気 小雨
フィールド はらっぱ広場
配付資料 昆虫網各目の系統と形態の概念図

観察会スタート 9:30

雨天のため、当初予定から1日順延しての開催となりました。
本日も小雨まじりのあいにくの天気です。
小雨のうちにフィールドで昆虫観察をします。

松香先生、宜しくお願いします。


フィールドでの活動 9:40

奈良町はらっぱ広場で昆虫観察。
小雨で気温も低く、虫はあまりいませんでした。


先生のお話を聞きましょう 10:20

10:10頃に自治会館に戻り、先生といっしょに今日の成果などのお話をしました。

__鎮目会長のお話
奈良川源流域を守る会は、この地域で自然保護に関わる活動をしています。昆虫の他、鳥や植物についても調査を行っています。
本日の講師である松香先生は、長年、玉川大学で生物学を教えておられました。
ミツバチが専門で、テレビなどにもよく出演なさる有名な先生です。

__松香先生のお話

みなさんにお配りした系統図は、昆虫の形態から分類をしたものです。
下の方にいるグループ(翅のない虫: シミ目,トビムシ目など)より上のグループ(蛹を生じ完全変態: ハチ目,コウチュウ目など)の方が身近で馴染がありますね。

昆虫は、名前のついている種類が世界中で80万種ほどおります。うち日本にいるのは3万種類ぐらい。私の専門のミツバチは世界中で10種類、日本には2種類しかいません。

ハチ目には、コウチュウ目などと同じく20万種ぐらいの種類がいます。アリもハチ目の昆虫です。
ハチの仲間は大きく分けると、植物食のハナバチと、動物食のカリバチがいます。ミツバチはハナバチの仲間、今日の観察会ポスターに写真がある青色のハチはルリモンハナバチのようですが、これもハナバチの仲間です。

●参加者から松香先生に質問

ミツバチは社会性を持つ昆虫といわれますが他にはいるのですか?
社会性の意味は、分業をするということです。ミツバチは、ひとつの巣のなかに、女王バチ、オスバチ、働きバチなどの分業形態を持っています。
一部のハチとアリの他、シロアリも社会性昆虫です。
最近、アブラムシの仲間にも兵隊アブラムシという分業を持っている種類がいることがわかり、社会性昆虫に分類する人もいます。

虫を食用にするという話を聞いたのですが
動物性タンパクとして虫を食べる地域は世界中にあります。
イナゴやハチノコなどはこの辺りでも食べることがあると思います。長野県では黒スズメバチやザザムシは高級食材のようです。

研究で海外に行かれることはありますか?
アジア養蜂協会の用事で、ベトナムやインドネシア、ネパールなどに行きました。(生態系保全のため)外来種を持ち込まずに養蜂を行う方法をよく議論しました。

日本の場合、外国産ミツバチは越冬ができずに死んでしまうのであまり問題になりませんが、外国の場合だと繁殖して生態系に影響を及ぼすこともあるのです。例えばオーストラリアでは元々ミツバチはいなかったのですが、今は野性化しています。


温暖化などの気候変動は、ミツバチにも影響を与えているのでしょうか?
まずわかっていただきたいのは、ミツバチは家畜であるということです。ミツバチを増したり、養蜂地を移動したりするのは、人間の手でコントロールされています。ミツバチ自身が変化を起すというより、人間が変化に対応する動きをしているわけです。

昆虫によっては、この植物の葉っぱしか食べない、という種類がいますが、温暖化によって植生が変わると絶滅してしまうのでしょうか?食べ物の選択肢を広げて対応する、というようなことはないのですか?。
:なかには、そういう対応を行い生き延びる種もいると思います。チョウの仲間には、この食べ物しか食べない、という偏食種がいますね。日本の国蝶であるオオムラサキはこの近辺にも生息していますが、幼虫はこどもの国のなかに生えているエノキしか食べないのだそうです。不思議ですね。

昆虫ではない節足動物、クモやムカデ、サソリなどは、昆虫の進化系統とは根本から別モノなのでしょうか?
はい。別物です。昆虫とは先祖が違います。
昆虫は、未発見のものも含めると地球上に100万種ぐらいいると言われていますが、海に住んでいる種類は少ないのです。カニやエビ、フナムシやグソクムシなど、海は昆虫ではない節足動物の方が優勢のようです。

11:20ごろ、観察会を終了いたしました。

(了)