昆虫観察会の報告


日時
2011年8月20日(日) 午前9時00分
集合場所 奈良上自治会館
参加人員 約20名
講師 松香光夫先生(玉川大学元教授) 助手: 横倉さん(玉川大学3年)、松野さん(玉川大学2年)
司会・進行 渡辺坦さん(奈良川源流域を守る会)
フィールド はらっぱ広場
配付・回覧資料 (1) 昆虫網各目の系統と形態の概念図
(2) 里山公園で観察された昆虫リスト


観察会スタート

心配されていたお天気もどうにかもってくれそうです。
9時10分頃から、奈良上自治会館屋内にて観察会スタート。


はじめに、奈良川源流域を守る会 渡辺会長から挨拶。




続いて松香先生から、配付資料(1)を使って昆虫の分類に関するお話がありました。




フィールドでの活動

9:30〜10:40、会館前の奈良町はらっぱに出掛けて昆虫観察しました。
天気は曇り、気温は涼しく活動し易いです。

大人も子供も、しばし虫取りに勤しみました。
わからない虫がいたら、先生に聞いて下さいね。






今日の成果など

10:50頃に自治会館に戻り、先生といっしょに今日の成果などのお話をしました。

●どんな虫が採れたかな?

子供達の虫籠にはいろんな虫が沢山入っています。バッタ、カマキリ、トンボ、チョウ、などなど。


配付資料(2)を使って、採取した虫を確認していきましょう。
オオカマキリ、アオバハゴロモ、キアゲハ、キチョウ....

●参加者から松香先生に質問

この辺にはホタルはいるんですか?
(この質問には源流域を守る会から回答)
ほんの少しですがヘイケホタルが残っています。夜の7時過ぎぐらいに飛翔します。8月の中旬ぐらいまで見ることができます。
15年ほど前までは、本日活動フィールドとした奈良町はらっぱ広場は田んぼでした。当時は沢山のホタルの乱舞を見ることができました。

コフキコガネはめずらしい虫だったんですか? 私の実家の方では沢山見ることができるのですが、この辺ではあまり見られないようなので。
コフキコガネは割とよく見る昆虫です。昆虫は植生や湿度など環境の違いに敏感ですので、昆虫調査をしている里山公園は、コフキコガネがあまり好きな環境でないのかもしれません。

●ハチについてのお話

松香先生のご専門であるハチについていろいろと伺いました。

ハチには大きくわけて2つの種類があります。花の蜜を食べる「ハナバチ」、食肉性で他の昆虫の狩りをする「カリバチ」です。
配付資料(2)によると、この辺りではカリバチの方がよく見られるようですね。

ハチはどうやって越冬するのでしょうか?
ほとんどのハチの仲間は、女王バチだけが越冬します。
カリバチの一種である「スズメバチ」は、女王バチを中心とした2000匹ほどの集団で巣を作りますが、冬になると女王バチ以外は全部死んでしまいます。女王バチが1匹だけで木のムロなどで越冬します。
スズメバチは夏のあいだに大きな巣を作りますが、冬になると巣はからっぽになります。巣は再利用されずずっと空家のままになります。
春になると女王バチは1匹で卵を産み、自らこれを育てていきます。そしてどんどん仲間を増していって2000匹ほどの集団を作るんです。女王バチは集団が大きくなると卵を産むことに専念しますが、小集団の時には幼虫の世話なども女王がするんです。
ハナバチの代表の「ミツバチ」は実は少し特殊なハチです。ミツバチは働きバチも越冬します。夏の間に溜めこんだハチミツを消費しながら集団で越冬します。

先生はミツバチをお飼いになっているとのことですが、こわくないのですか? 刺されたりしないの?
ミツバチはほおっておけば攻撃してきません。普段は刺すこともあまりありません。私はこの5ヶ月で2回ほど刺されましたが。
ハチの毒は人によってずいぶんと腫れ方に違いが出るようです。また何回も刺されるとあまり腫れなくなるようです。
刺される場所によっても違うかもしれません。以前アシナガバチに踵を刺されたことがあり、この時は脚の付け根まで腫れてしまい授業できなかった時がありました。

養蜂用のミツバチは売っているんですか?
はい、売られています。私が購入したのはすぐに蜜が取れるようにセットされたもので少し高額で、一箱で4万円ほどしました。
蜜蜂は、1箱に20,000匹ほど入っています。

ミツバチは虫を食べるんですか?
食べません。花の蜜だけを食べます。女王バチは蜂蜜ではなくローヤルゼリーという特別な食べ物を食べます。

女王バチは特別なのですか?
働きバチの寿命が約2ヶ月程度なのに対し、女王バチは3年から5年生きます。
女王バチは一回に1000コから2000コの卵を産みますが、これは自分の体重と同じぐらいの重さです。一生の間には百万個ぐらい産むと言われています。すごいパワーだと思います。
女王バチはローヤルゼリーしか食べませんので、長寿命、高生産性の元はローヤルゼリーにあるのだと思います。

交尾は1回だけですか?
結婚飛翔の時の1回だけです。ただ、10匹程度のオスバチと交尾するといわれています。
死ぬまでの3−5年の間はこれを溜めておくのです。

散歩道にクマンバチに注意と書かれていました。クマンバチはよく刺すのでしょうか?
一般にクマンバチと呼ばれるのは、オオスズメバチのことです。オオスズメバチは大型のカリバチでかなり攻撃的です。クマバチというハチもいますが、これはハナバチであまり攻撃してきません。
9月から10月のオオスズメバチは非常に危険で、注意が必要です。
さっき言ったように、スズメバチは冬になると女王バチを残して死んでしまうのですが、越冬する女王バチに体力をつけさせるために積極的に狩りをするのです。

ハチはみんな集団生活をするんですか?
孤独性のハチもおります。むしろ社会性ハチのほうが稀で、多くのハチは孤独性です。
孤独性のハチは、バッタなど他の昆虫同様、一匹で独立して生活し卵を産みます。

ミツバチは集団の2割程度しか働いていない、というのは本当ですか?
はい。平時には2割程度しか働いておらず残りの8割は遊んでいるようです。しかし、例えば巣が壊れるなどの緊急事態が発生するとそれまで遊んでいたハチも働き出します。目の前に仕事があると働くようです。

ハチミツはミツバチが吐き戻したミツなんですよね。気持ち悪いです。
ミツバチの身体には、胃の前にミツを溜める器官があり、巣に帰るとここからミツを戻します。胃から戻すわけではありません。身体の中にバケツを持っているようなものです。
ミツバチの唾液には糖を分解する酵素が含まれており、これによって蜜の糖分は果糖やブドウ糖に変化します。またハチミツは糖度が非常に高く80%程度もあります。あまりに糖分が高いためハチミツの中では雑菌は繁殖できません。ハチミツは腐ったり変質したりしないため100年以上前のものでも食べることができます。

●鈴虫のプレゼント

奈良川源流域を守る会会員の高橋様から鈴虫のプレゼントがあり、希望者にお譲りいたしました。

11:50ごろ、観察会を終了いたしました。

(了)