=「初夏のバードウオッチング」の報告=


1.日時=平成19年5月19日(土)午前8時から12時頃
2.集合場所=奈良上自治会館
3.参加人員=約45名
4.講師=仲俣申喜男先生(日本野鳥の会)
5.司会・進行=山田美那子さん
6.天候=曇りのち雨、最後に晴れ
7.フィールド=はらっぱ広場、土橋谷戸(たんぼ)、本山池、東山尾根道、里山公園、

◎山田さんから講師の中俣先生の紹介の後、中俣先生から次のような説明がありました。
仲俣先生「今日は少し雨がふっていますが、皆さんお集まり次第、バードウォッチングに出ます。樹木がだいぶ生い茂ってきましたので、鳥の姿は見えづらいと思います。声が頼りになります。従って、静かに歩いて頂き、鳥の声に耳を傾ける、そう言う探鳥会にしたいと思います。運が良ければ鳥に姿が見える、そう思って下さい。なお、バードウォッチングを終えましたら、ここに戻りまして「鳥あわせ」を行います。今日皆さんが、どんな鳥を見、声を聴いたか、確認するのです。では、出発しましょう」

----------------フィールドメモ---------------
◎はらっぱ広場周辺
中俣先生「ピー、ピー鳴いているのはヒヨドリですよ。あそこに鉄塔が見えますね。あの鉄塔の上から2番目の段の左側にカラスの巣があります。酒屋さんが教えてくれました。今、カラスが寝ているようです。望遠鏡で見てみましょう」

はらっぱ広場

◎土橋谷戸(たんぼ周辺)・・・2羽のハクセキレイ(うち一羽は若鳥)
中俣先生「鳥を側で見ることの出来ない時でも、飛び方で鳥の見分けることが出来ます。スズメやムクドリは真っ直ぐに飛びますが、ヒヨドリは波形に飛びます。」
「ジョッ、ジョッ、ジ、ジ、ジと聞こえますね。あれは、はらっぱで鳴いているオオヨシキリの声です。行々子(ぎょうぎょうし)とも言って、俳句の季語になっています」
たんぼには、二羽のからすとムクドリがいて、上空にはツバメが舞っていましたが、雨足が強くなってきましたので、野川邸を通って本山池に向かいました。

たんぼ野川邸

◎ 本山池
野川氏「下のたんぼに水を張るとカワセミが来ますが、本山池には、この頃、来ません。というのは、ブルーギルが他の稚魚を全部食べ尽くして、カワセミの好きなどじょうなどの生き物がいなくなってしまったからです」
山田会長「本山池の一部を調査したところ、千何百匹ものブルーギルがいました。この池全体ですと、何万、何十万匹もいるでしょう」
池の奥では、二羽のカルガモが泳いでいました。

ブルーギルについて

本山池カルガモ

◎ 東山尾根道・体育館前
中俣先生「体育館でチョウゲンボウが営巣しているのが見えますね。メスは大きく頭が茶色なので、あれはメスのようですね。オスの頭は白いです」
「タラララー、と音がしますね。あれは、コゲラかアオゲラの木を突く音です」
「ゲー、と鳴いて飛んでいったのはコゲラですね」
「ウグイスの声が聞こえます。良く聞いてみましょう。ふつう、ホーホケキョ、ホー・ホチホチと鳴きますが、ヒー・ホチホチと鳴いていますね。昨年当たりから、あのように鳴いています」
「良い声が聞こえますが、あれはガビチョウ(画眉鳥)ですね。中国から輸入された鳥ですが、生態系に良くないですね」

東山尾根

体育館チョウゲンボウ

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その後、里山公園によって、自治会館に戻り、「鳥あわせ」
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(今日見た鳥)
ムクドリ、カラス、チョウゲンボウ、ヒヨドリ、キジバト、メジロ、スズメ、ツバメ、ハクセキレイ、雉(メス)、カルガモ、シジュウカラ(声はツー、ビー)、アオゲラ(声はビョウ、ビョウ)ウグイス(声)、カケス(声・ギャー、ギャー)、オオヨシキリ(声)、コジュケイ(声・チョットコイ、チョットコイ)、ガビチョウ(声)、コゲラ(声)
(鳥の様々の声)
仲俣先生「ウグイスは、ホーホケキョ、と鳴くといわれますが、鳥はこう鳴く、と決めつけない方が良いと思います。例えば、カケスはカラスの仲間ですが、猫の鳴き声をまねます。登山していた時、猫の声を聞いて、何でこんな処に猫が居るんだろうと驚きましたが、カケスのしわざでした。キジバトはホー、ホー、ポッポッポと鳴きますが、ブン!ブン!とも鳴きます。これは、求愛する時の声です。ハトには「そのう」という器官が胸のあたりにあって、食べたものをそこで消化して、ビジョンミルクと言うんですが、ミルクみたいなものにして、それを口移ししてヒナを育てるんです。だから一年中ヒナを育てることが出来るんです」
(最近のウグイスのさえずり)
仲俣先生「先ほどの尾根道でも聞きましたが、ホー、チョビチョビ、とウグイスはさえずるようになったようです。このあたりだけでなく、信州や山梨に行ってもそうさえずります。ウグイスの三つ音(ね)といいまして、ホーホケキョというさえずりを中音(なかね)、ヒーホケキョというのを高音(たかね)、ホーホホホケキョというのを低音(下げ)と言います。詳しく聴くともっとたくさんの鳴き声あることが解ります。ケキョ、ケキョケキョ。これは谷渡りと言って、物の本には、警戒音、と書いてあるが、疑問ですね。物の本を鵜呑みにするのは、危険が伴いますね。例えば、メジロは危機に遭遇すると、ケケケケ!と鳴きますが、いかにも、気をつけろ!とアラームを発しているようです。ところが、ウグイスの谷渡り、ケキョケキョはのんびりと長々とやっていて、とても警戒音には思えません。ケキョケキョはさえずりのメインで、ホーホケキョはそのプレリュードではないかと思います。
(鳥の方言)
仲俣先生「コジュケイはチョットコイ、と鳴きますね。『ちょっと来い』とは、戦中、戦前に憲兵や警官が『おい、こら!ちょっと来い!』と連行するときのセリフですね。これが英語だと『ピープル、ホワイ』と聞こえます。熊本では『ちっと、食え』と言います。これは肥後弁で、あまり食べるな、と言う意味で、哀れな貧しい時代の聞こえ方ですね。これが、薩摩になると『ケツ、かゆい』と聞こえます。これは、『聞傚し(ききなし)』といって、鳥のさえずりを日常の言葉に当てはめることですが、こうすると覚えやすいですね。これは、日本人に多い特徴です。右脳、左脳とありますが、西洋人は鳥の声を右脳でメロディーとして感じる、日本人は左脳で言葉として聞く、という説がありますね。
質問「地方によって、鳥の声は違うんですか?」
仲俣先生「方言のようにあります。日本では、あまり研究はされていないのですが、アメリカでは研究が盛んで、鳥を隔離して実験したところ、親と同じように鳴くのと、鳴かなかった例があったそうです」
(ホトトギスの托卵)
仲俣先生「ホトトギスですが、このあたり、玉川学園と岡上の森に5、6年前から数つがい居ます。何で、このあたりに居着いたかというと、このあたりにはウグイスが居るからです。ウグイスの巣に托卵するのです。そうすると、ホトトギスはウグイスの声で鳴きそうですが、ホトトギスの声でしか鳴きませんね。今年はまだ、ホトトギスの声を聞いていませんが、どなたか聞いた方はいらっしゃいますか?」
質問「ホトトギスは夜も鳴くのですか?」
仲俣先生「鳴きますよ」
(外来鳥の特徴)
仲俣先生「ガビチョウ(画眉鳥)がこの数年で増えました。ギッギッギッ、ゲゲゲときれいな声でメロディアスに鳴きます。つがいで居ますが、中国の鳥で盛んに繁殖しています。ソウシチョウ(相思鳥)も中国の鳥で、玉川大学のキャンバスに居ますね。両鳥とも日本の鳥と違って、一年中さえずっています。冬の真っ最中に鳥の声が聞こえたら、日本の鳥でないと思ってください」
(キセキレイの闖入)
質問「先生、電線にとまっている鳥は何ですか?」
仲俣先生「シジュウカラのようですが、望遠鏡で見てみましょう。あれは、キセキレイですね。このあたりは本当に鳥が多いですね」
(アッシジのサン・フランチェスカのように)
仲俣先生「鳥の話を続けましょう。モズ(百舌)、と言う鳥は百の舌と書きますから、色々に鳴きます。カラスの仲間は学習能力が高いと有名ですが、ほかの鳥も高いのではないでしょうか?アッシジのサン・フランチェスカのように鳥と話が出来ると良いですね。日本野鳥の会の創立者の中西悟堂さんは、スズメの声で人が来たかどうか解ったそうです」
質問「テレビのニュースで、コンニチハ、としゃべるスズメが報道されていました」
仲俣先生「それはすごいですね。鳥は何気なく鳴いているようですが、すべて意味があるのではないでしょうか?ウグイスは、冬には、ジャッ、ジャッと笹鳴きしますが、ただ鳴いているのではないですね。そばにメスが居るんですね。ひとりでは鳴きません。コミュニケーションを図っているのと、縄張りであることを主張しているんですね」
質問「サシバが近所で確認されたんですが、少ないのですか?」
仲俣先生「サシバは渡り鳥です。昔はたくさんいましたがね。知多半島や佐田岬に立ち寄るのは有名ですね。上昇気流が発生するときに、そこから飛び立っていくんですね」
質問「この辺は鳥が多いですか?」
仲俣先生「多いですね。早起きしたときは、テレビやラジオをつけないでいると多くの鳥の鳴き声を聞くことが出来ますよ。朝の4時から8時ぐらいですね。また、夕方も多く聞けますね。それから、君たち、子供たちは、大変耳が良いですね。でも、注意しないと、ディスコとかヘッドホンとかやっていると、難聴になって、高音が聞こえなくなってしまいます。そうすると、鳥の声は聞こえなくなりますね。それはともかく、今日はこの辺でお開きにしましょう」
山田さん「先生、今日はどうも有り難うございました」

以上